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不運な人生
山田宗樹の「嫌われ松子の一生」を読んだ。映画も公開されて(まだやっているのかな?)、予告編を見ていて前から気になってはいたのだけど、おすぎがテレビで「中谷美紀がヘタなんだもんッ!」と言っていたので、何となく映画館には足を運んでいなかった。「下妻物語」の監督らしいし、私は「下妻物語」も見ていないし、好み的に違うかな?とも思っていた。でも物語には興味があって、ブックオフで文庫本をゲットしたので、上下巻と少し長いけど読んでみた。

まず本を読んでみて、映画の予告を見て感じていた印象とだいぶ違った。映画は主題歌も派手で、出演者もバラエティに富んでいて、コメディタッチの映画なんだと思っていた(実際映画はどんなタッチになっているのか分からないが。)でも物語は、とてもコメディには出来ないような、笑ってしまえない松子の人生が描かれていた。

物語は都内のアパートの一室で、遺体となった53歳の松子が発見される所から始まり、松子の甥の笙が今まで知らなかった松子の人生を調べて知っていく部分と、松子が自分の人生を順に語っていく部分が絡まり合って進んでいく。松子が何故殺されたか、殺されるまでどんな生活をしていたか、松子の過去がどんどん明らかになっていく。

それは、ちょっとした所から踏み外した人生が、どんどん悪い方向に転がっていくものだった。松子は頭も良くて器用だし、決して悪い人間ではなかった。最初は教師として頑張っていたのに、自分の努力とはうらはらに不運が重なり、教師を辞め、失踪をし、風俗で働いたり、覚醒剤をやってしまったり、殺人を犯して刑務所に入ったりする。でも松子は最後まで愛に生きたのだった。色んな男と出会ってきたけれど、最後は一人の男の愛を信じて生きていたのだ。そして、悪いことばかりだけど一生懸命幸せを求めていた人生を、最後は殺されて締めくくる。

一人の女性の人生として、これはかなりショッキングだった。あのときあんな事がなければ…と思うことがたくさんあった。そのポイントで松子は何度も人生を変えられた。松子は最初は普通の中学校教師だったはずだ。普通のと言うよりちょっと頭の良い女性だった。それをあるきっかけで変えられてしまう事って、誰にでも可能性のあることなのではないか。自分だって例外ではないはずだ。

松子の甥の笙が松子について知っていくうち、松子が殺人を犯して服役したことがあると知ってショックを受け、もう知ることが嫌になってしまう。松子のことを良く知る人が笙に話をしていて、何故殺人を犯したか事情も知らずに松子を嫌悪した笙に対して、「はずみで誰かを殺してしまうことが、(自分には)絶対にないと言えるかい?」と問う。

笙が感じた「松子と同じ事が自分に起こらないと言う保証はない」ということを、私も感じた。松子のように殺人や覚醒剤や刑務所などと壮絶ではないとしても、53歳で一人で都内のアパートの一室で死んでいくということが、自分には無いとは言えないのだ。それは重い考えだけど、人生は何がきっかけで変わるかとか、何が起こるか最後まで分からないということを、感じようと思った。

松子の人生だけでなく、松子のことを知って変わっていく笙の姿というのも見所だった。特に最後の方ではすごくいいことを言っていたし、考え方も急激に大人になった。笙以外の人物にも、心に残る言葉がいくつか出てきた。例えば松子と愛し合っていた洋一が、恋人と別れてしまった笙に対して言った言葉。「人生に出会いはたくさんありますが、ほんとうにいい出会いは数えるほどです。笙さんにとって、数少ない、よい出会いの一つではないのですか。もっと大切にしなくて、いいのですか?」

この作家が今までどういう作品を書いてきたか知らないけど、初めて読んで、読みやすくどんどん先へ進めたし、いい言葉もあるなぁと思った。映画を観ずに先に小説を読んだのは良かったのかもしれない。映画館で観なくとも、DVDになったら観るくらいでいいかと思う。そういえば、「ダヴィンチ・コード」も結局映画は観に行ってないな。本を読んだことで、私の中で「ダヴィンチ・コード」に関しては、もうお腹一杯になってしまった感がある。
by anewyearsday | 2006-06-29 01:21 | | Comments(0)
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