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古道具屋
長嶋有の「夕子ちゃんの近道」を読んだ。主人公の青年が、古道具屋の二階に住み込みで働く半年間の「人生の春休みのような日々」(本の帯より)のお話だ。長嶋有の作品は前に2冊読んでけっこう気に入っているので、この本が本屋に置いてあるのを見つけてすぐに購入した。というか発売されているはずなのに、会社の近くにある小さな本屋やたまに行く本屋は何度も見たのに置いてなくて、休みの日に大きな本屋に行ったらあって、やっと買えたという感じだった。

作家の長嶋有については、最初名前からして女性だと思っていた。私は男性作家の小説は何かナイーブすぎて嫌だとか前にも書いたけど、この人のはそういう感じはない。女の人もかっこいいし、さっぱりしていて好きな感じだ。だからこそ男性だと気付かなかったのかもしれない。年齢は私より少ししか歳が上でなかった。作家ってたいてい年齢がかなり上という印象があるけれど、作家本人のブログに書かれたプロフィールを見てびっくりした。他の作品も読む機会があれば読んでみたいし、これからも気にしてみよう。

「夕子ちゃんの近道」の内容はどんなか知らなかったけど、本の帯に「古道具屋」という言葉を見て、きっとこれは私好みだ!と思った。前に日記に書いたけど、私のお気に入りの作品に、川上弘美の古道具屋が舞台の小説があるからだ。川上弘美のは「中野商店」で、長嶋有のは「フラココ屋」だけど、違う古道具屋でも共通する部分があった。店長は仕事に対していい加減なのか真面目なのか分からないけど、商品のインターネットでの売買を始めたりとか、最終的には店を一時閉めて真剣に今後のための買い付けを始めたりとか。二作品を比べてもしょうがないのだけど。

若いんだか歳なんだか分からないけど、優しくもないけど冷たくもない店長や、実は以前その古道具屋の二階に住んでいたという近所の常連の女性や、近所に住む双子のようによく似た学生の姉妹や、口うるさくて頑固な姉妹の祖父である大家さんや、流暢な日本語を喋る相撲通のフランス人女性など、個性のある面々が主人公の周りを取り巻いている。のんびりした雰囲気はあるのにだらだらしているわけではなく、登場人物はみんな自分の将来に希望や責任を持っていて、みんな強かった。

主人公が常連の女性から化粧品の名前を言われ、SF映画に出てくる登場人物や敵の怪獣や悪の軍団の名前を次々にイメージしていくところとか、近所に住む姉妹の妹の方がインスタントコーヒーのことを「インシタンスコースー」と言うところとか、そんなのもちょっと笑えた。

古道具屋は不思議な所だと思った。「義理人情」なんて暑苦しい言葉は合わない気がするし私も好きじゃないけど、そこにいる人たちは確かに何かで繋がれているような気がした。ある一時期偶然にそこに居合わせた人や出来事を切り取ってみたら、何か面白くて味のある風景だったという感じかもしれない。たまたま人生が重なり合った人たちと過ごす、長い人生から見ればほんの一瞬でしかないような時間が、二度とない貴重なものになっていくんだなぁということが、この本を読んで私の頭に浮かんだ。何かもっと上手く表現できればいいのだけど。
by anewyearsday | 2006-05-25 01:12 | | Comments(0)
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